とある友人の歯科医師の最近の体験談です。

 

自宅のマンションのエレベーターに乗っていると、40歳くらいの男女が乗ってきたそうです。

友人とその男女は面識がなく、もちろん向こうも友人が歯科医師だとは知りません。

 

あの狭い空間特有の、知らない人同士の気まずい沈黙が少しあった後、男女が会話し始めました。

 

男「最近歯が痛くてな」

女「え~そうなんだ。虫歯かな?」

男「虫歯かもな~。1年くらい様子見て、痛かったら歯医者行くか。」

女「うん。そうしなよ!!」

 

そうしてあっけにとられる友人(歯科医師)を残して、エレベーターを降りて行ったそうです。

 

        
・・皆様はここまでのお話をお読みになって、どう感じられましたでしょうか?

        
 

「いやいや1年って!!今すぐ歯医者行きなよ!!」思われた方

 

「? 普通でしょ?いったいこの話は何がいいたいの?」と思われた方

 

「歯が痛いくらいでガタガタいうな!!女にそんな泣き言いうなんて情けない!!男は黙って我慢だ!!根性だ!!!」と思われた方・・・(笑)

 

きっと皆さんそれぞれ様々なとらえ方をされたでしょう。

 

歯医者の私からすると、できることなら、せめてこのうちのースレターの読者様だけでも、1番目のように思われた方が多いことを心から願いますが、我々歯科医師からすると驚くべきことに、そして一般の方々からすると意外と変なわけでもなく、2番目のような考え方の方はたくさんいらっしゃるようです。

 歯というものは多くの方で、一般に、大人の歯なら28本、親知らずを入れて32本、皆さんお持ちです。

 

子供の歯から生え変わるため、子供の歯の時にあった小さい虫歯くらいなら、大人の歯になるときにある意味リセットがきいてしまいます。

 

そして、1本や2本抜けても、いきなりはそんなに食事に影響は出ないことが多いです。

 

また、大人になると、仕事や育児などで学生や子供の時のように自由には時間がとりづらくもなり、ちょっとの事では中々病院に行くのも大変にはなります。

 

そういった中で、なんとなく歯は、またリセットがきくんじゃないか、1本や2本たいした問題じゃないじゃないか、だって忙しいし・・・と軽視されやすいのかもしれません。

 

冒頭の男女の会話もこういった中から発せられたものだったのかもしれません。

 

しかし私たちは毎日診させていただいています。

多くの歯を失って入れ歯で困ってらっしゃる患者さんを。

そして知っています。

その方々もいきなりそうなったのではないということを。

 

初めは1本の虫歯や親知らずから、少しづつ、しかし確実に、院長がよく言う「ドミノ倒し」のように、歯を失い、噛めなくなっていったのだということを。

 

「痛み」は体が教えてくれている警告で、大切なサインです。

これは根性で耐えにゃならんものではなく(笑)耳を傾けてあげるべきものです。

 

実際には食べかすが詰まって歯茎が腫れただけかもしれません。

 

ちょっとしっかり歯磨きしたら治る程度のものかも。

 

しかし、それでも、その痛みは「放置し続けたら大変だよ」という充分重要なサインなのです。

 

その先にある大事に陥らない為にも、素直に聞いてあげてください。

 

その解釈は私たちがお手伝いします。

 

冒頭の男性が、1年放置しないで、大事にならないことを友人の歯科医ともども祈っています。

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